ウェブアニメ探訪【「CATMAN」作者に聞いてみた:前編】

2008 02/28亜樹28号

◆ 祝、「CATMAN」地上波TV放送!!
 2002〜2003年、ShockwaveにてWeb配信されていたアニメーション、「CATMAN」が昨年6月から旧シリーズを含めフジテレビのサイト「お台場ランド」にて再配信され、それに伴い新しく制作された「シリーズ3」も今年の2月に無事エンディングを迎えました。旧シリーズがShockwaveで観られなくなっていたので、今回の配信は、以前からのファンの方々にも嬉しい企画だったのではないでしょうか。更には、来る3月1日(今度の土曜日)には、フジテレビの地上波、深夜28:10〜28:40の枠で新作「シリーズ3」全6話が一挙に放送されます。
ということで今回と次回、2回に分けて作者の青池良輔さんに、現在の心境や作品についてなど、いろいろお話を伺ってみました。

<青池良輔プロフィール>
1972年、山口県下関市生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。
映画プロダクションへの就職を機に、カナダ、モントリオールへ。本業の傍らFlashでアニメーションの制作を始める。幸運にも初めて作ったアニメーション「CATMAN」がAtomShockwave.K.K.の当時のプロデューサー平沢真一氏の目に留まる。以降、本格的にウェブ、TV、DVDなどに向けFlashを用いてアニメーションの制作を行う。(aoike.caより転載)

◆「新シリーズ」制作の舞台裏とは

——「CATMAN:シリーズ3」お疲れ様でした。とりあえず、新シリーズを無事終えられての現在の心境などを。

 まだ熱い感じです。作品についても「きっと悪くない」という感じですね。ただ今回、ちょっと「壁」を感じた所があって、もっともっと作品を良くするには何が出来るんだろうと今必死に考えています。出来れば、プロ、アマチュアを含め、いろいろな環境で制作されている方の話を聞いてみたいっていう感じです。どうもインターネットに依存が強くなってくると、ネットでのリアクションが気になっちゃって、つい「CATMAN」に関する検索ばっかりしてしまいます(笑)。

——充実感もありながら、反省点も見えてきたと。

 そうですね。壁って言うのは、技術的な事ももちろんですし、なんというか「作品をリッチにする手段」をもっと手に入れたいと感じています。あと、やっぱりというか、なんというか…体力的な壁が…。確実に徹夜がつらくなってきていますね。以前のシリーズは、徒然なるままに作っていたので尺(本編の長さ)がバラバラだったのですが、今回はちゃんと時間を5分に決めて作ろうと決めました。それで、これは本当に僕の責任なのですが、シリーズ1・2と「CATMAN」のエピソードは1本2週間で作っていたので、今回もそのつもりで準備していたら…地獄を見てしまいました。
 そりゃ考えてみれば、一番最初に作った「シリーズ1」の「エピソード1」の頃から比べたら、どうしても時間がかかるようになってますよね…。

——なるほど。その辺りの話は興味深いので、後でもう少し突っ込みたいですが。その前に、そもそもフジテレビのサイトで「CATMAN」を配信するようになったのは、どのような経緯だったのか、差し支えなければ教えて頂けますか?

 以前公開させて頂いていたShockwaveさんとの契約更新に際し、また新しい展開がしてみたいというこちらの要望で、僕のエージェントのCreativeArtistsの方からフジテレビに持ち込まさせて頂いた感じです。 それで「新シリーズやるかい?」ということで、ちょうどその時日本にいたので、「フジテレビの社員食堂でお寿司を食べながら考えたい」と言ったら実現しちゃって(笑)。それからはトントンと話が進んで行った…と言う感じです。

——TV局(フジテレビ)との仕事ということで、気を使ったことはありますか?

 一番初めに「お酒と煙草がNGになるのか?」という事は確認しました。媒体が大きくなると、そこが心配でしたが大丈夫でした。
 フジテレビさんと言う看板の軒をお借りする事で、ある程度お行儀良くしないといけないかとも思ったのですが、最終的には内容的にNGが出る事がなく、ほっとしています。
また、せっかくTV局という「エンターテイメント」のノウハウを持つ会社がパートナーになってくれたわけですから、局のプロデューサーの方には「面白くなる秘訣を教えて下さい!」とお願いしましたね。それでいろいろお話しさせて頂き、いろいろ勉強させて頂きました。実際、制作に入ってからは「エピソード1」で方向性を修正頂いたので、その後かなり助かりました。

——局のプロデューサーとのお話で、他に印象的なことがあれば。

 僕個人に向けて、ということではないですが「インディペンデント作家が他の作品をパクってないって保証は?」というお話をさせてもらい、ずいぶん考える所がありました。普通作品を作る時の契約書には「全ての権利処理は製作者側が責任を持つ云々…」という規約があるので心配はないですが、ネットから作品を拾ってくる場合には、放送するサイドにはそういう心配があって然るべきだなぁと。

——というコトは、逆に考えるとTV局もネット配信のいろいろな作品に少なからず興味を持っているということでしょうか。

 これは、あくまでも僕個人の意見としてですが、広くかつ時間を選ばずに観客にリサーチできるネットという媒体はTV局にとっても可能性の一つとして魅力のあるものだと思います。でも既存のテレビ番組は、スポンサー、出演者、制作会社諸々のしがらみがあって簡単にネットにはのせられないというのが現状だとも思います。そういう点を考えると、ネット上の作品というよりは、権利処理が比較的シンプルな作品について興味がある、ということなのではないかと思いますね。

——ああ、なるほど。そういうことですね。

◆「新しく作る」ということへの取り組み

——では今回「新シリーズ」というコトで一番気を使ったことは?

 続編って言うのは「どの切り口で行くのか」というところで本当に頭を抱えてしまいます。「シリーズ1」から「シリーズ2」を作った時も、かなりキツかったのですが、さらに続編となると「ん〜〜〜〜」っと。最終的には「シリーズ1」のリメイクでありながら、登場人物を増やしてドラマ的要素を濃くした作品にしようということで落ち着きました。

——そうですね。そう言う印象はありますね。

 古くから応援してくれている人には懐かしく、かつ別の切り口で。そして新しく見て頂いた人には、新シリーズだけでも楽しめるような形にしたいと思っていました。と偉そうな事を言っていますが、実は準備していた脚本は各エピソードA4で2枚ぐらいのスッカスカのものだったんですね。でも、手抜きということではなくて、狙いとして「インディーズ映画の様な間を残す」というところがあって、バキバキにデジタルで作ってしまう作品の中にも、雰囲気のある「間」が作れないかと思っていたので。ただ、この点は製作中に「もっともっとディティールを」と思い始めてしまって、当初思っていたほどうまくいっていないかも知れないです。

——ディテールというのは?

 なにはともあれ、以前のシリーズを応援してくれた人たちに向けてレベルアップした「CATMAN」を見せたいというのがあって。その為に自分に何が出来るかと言うところを色々見つめ直し、まずはグラフィック面の強化とをしないといけないなぁと。僕はあまり絵が得意ではないので、まず3Dでメシを食っている友人の協力を得て3Dでキャラクターのモデルを制作し、キャラクターのバランスを作り直しました。その後、全カット3Dでレイアウトを組んで、実写を加工した背景との組み合わせ、光源の設定等を行い。それを元に2Dで絵を描いていきました。
 アニメーションは全て今まで通り僕がメインで使っているAdobe Flashというアプリケーションで制作していますが、部分的にSwiftという3Dアプリケーションで小道具を制作して取り込んでいます。

——「作品をリッチにする手段」と言うのは、こうした部分の話なんですね。今回の作品を踏まえて、更にチャレンジしたい構想と言うのも見えてきましたか?

 「もっと人の力を借りる」(笑)でしょうか。僕の場合、絵を描くにしても、アニメーションを作るにしても、自分がアマチュアだと言うコンプレックスがつきまとっていて、今、目の前には超えなきゃいけない壁が見えている所かと。「自分ががんばれば!」っていう気持ちにそろそろ見切りをつけて、他の人の才能を貸してもらいながら、より良い作品づくりをするということに興味が湧いてきました。

——では、実際、制作に入ってからの予期せぬ苦労話などがあれば。

 まだ脚本を詰めている頃、里帰り出産で実家に帰っていたのですが、やっぱり実家と言うか、あまりにアットホームな雰囲気に「こんな環境で書けん!」と近所のホテルにプチ家出をしてしまいましたね(笑)。

——ホテルで脚本執筆とは、苦労というより贅沢ですね(笑)

 作画しているときなんかは、何かしら音を出している方が落ち着くのですが、今回途中から「もののけ姫はこうして作られた」っていうDVDをヘビーローテーションでかけていて、「宮崎監督の製作中の空気のお裾分けでもしてもらおう」と思っていたのですが。なんかすごいクオリティーのものを横目でずーっと見ていたら、どんどん自分の作品が駄目に見えてきてしまって…。締切は迫っているのに、作画を直したりしていろんな人に迷惑をかけてしまいましたね。

——「もののけ姫はこうして作られた」がBGVですか!?それ結構ヘビーかも。

 そのせいか分かりませんが…変に肩に力が入ってしまい、もうほんとギリギリまで「どうしよう〜」とか言ってしまって、今回着色をして頂いた二人のクリエイターの方には「36時間で60カット塗って下さい」とか、本当にひどいオーダーをしてしまいました。

——うわ。まさに製作追い込みの「もののけ姫」状態だ。

 ただ、このお二人が菩薩の生まれ変わりのような人で、逆に僕がすごく励まされながら制作していました。また、もう一人の強力なヘルプで音関係をやってくれたコンポーザーの人には、「THE PLANET SMASHERSを中心に構成しながら、アメリカンニューシネマのサウンドトラックの様なブレイクを入れて欲しい!」とお願いして、短期間ながらいろいろな遊びを入れてもらって。陽気なスカだけではなく、かといって暗くなるばかりでもない、良い結果を出してもらえたと思っています。
 あと予期せぬ事と言えば、今回製作中はアルコールを断つと言う優良クリエイターを気取っていたのですが、疲れてくると体が異常に糖分を欲するようになって、途中からコーラがぶ飲み状態になってしました。今回製作中に飲んだコーラは…かなりいっぱいです(笑)。
後編はこちら


次回は、CATMANのキャラクター性やテーマ観などについて伺います。お楽しみに。 あと、今「CATMAN」携帯サイトで「世界で一枚のT-シャツプレゼント」企画もやっていますのでファンの方は是非応募を。詳細はブログCATMAN's Blahgで!

【関連サイト】
・aoike.ca/青池良輔
http://www.aoike.ca/
・フジテレビ>>CATMAN公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/game/catman/
・CATMAN's Blahg
http://wwwx.fujitv.co.jp/zoo/blog/index.jsp?cid=185&tid=

【関連記事】
・ウェブアニメ探訪 【「CATMAN」のこと】
http://www.animeflash.jp/news/catman.html
・CATMAN「世界で一枚のT−シャツプレゼント」
http://www.animeflash.jp/news/4/catmant.html
・CATMAN SeriesⅢ 最終回配信
http://www.animeflash.jp/news/2/catman_seriesiii.html

・MouRa>>青池良輔ロングインタビュー
http://moura.jp/frames/interview/071217/


【mixi「ウェブアニメが好き」コミュ管理人・亜樹28号/200802024-14】

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