ウェブアニメ探訪【「CATMAN」作者に聞いてみた:後編】

2008 03/ 7亜樹28号

 前回は「CATMAN」のTV地上波放送「シリーズ3」全6話一挙公開の緊急直前インタビュー!ということで、新作の舞台裏、作品製作にまつわるお話などを伺いました。後編となる今回は、TV放送を終えての心境を含め、青池さん自身が考えるCATMANというキャラクターについて、作品のテーマ性なども伺ってみたいと思います。

<青池良輔プロフィール>
1972年、山口県下関市生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。
映画プロダクションへの就職を機に、カナダ、モントリオールへ。本業の傍らFlashでアニメーションの制作を始める。幸運にも初めて作ったアニメーション「CATMAN」がAtomShockwave.K.K.の当時のプロデューサー平沢真一氏の目に留まる。以降、本格的にウェブ、TV、DVDなどに向けFlashを用いてアニメーションの制作を行う。(aoike.caより転載)

◆「映画」に寄せる想い

——今回のTV放映、如何でしたか。

 一昔前のFlashの状況を考えると、まさかオリジナルで本放送に乗っかれるなんて考えてもいなかったので、ちょっと盛り上がっています。放送自体はリアルタイムで見られなかったのですが、録画を見て「この番組は…」という提供のところがテレビっぽくてちょっと感動しました。あと、「テレビで初めて見ました。」という感想を頂いたんですが、それがものすごく嬉しかったです。

——TV放映は、企画の初めから決まっていたのでしょうか?

 「シリーズ1」と「2」のCS放送は初めから決まっていたのですが、「シリーズ3」のTV放映はプロデューサー陣の努力の賜物で実現しました。改めて感謝しています。
 僕にお知らせが来たのは結構最近でした。「TV決まったよ!」って。それでTVに合わせて多少の再編集、修正作業もありました。「WEB・モバイル版」ではシーンの切り替えや、ケンカのシーンをブラックアウトさせていたのですが、テレビ放送の場合はそのシーンが放送事故と勘違いされては不味いということもあって、「テレビ版」ということで、全くの黒みにならないよう手を加えています。

——映画会社勤務のキャリアを持つ青池さんですが、新作、旧作含めて「CATMAN」を作るうえで影響されている映画ってありますか?

 シリーズ通してであれば、「ブルースブラザーズ」でしょうか。何度見ても超かっこいいです。確実に影響を受けていると思います。

——なるほど!「ブルースブラザース」よく分かります。
では、とくに今回のために見た映画とかはあったりはするんですか?

 今回のシリーズでは「タクシードライバー」「レオン」「さらば青春の光」などを製作中に見ていました。「恋する惑星」も見直して、クリストファードイル的なイメージ作りって出来ないかなぁと悩んだりもしてました。できなかったですけど…。BGVとして観ていたのはもっといろいろあるのですが、そういった映画は参考吸収というより楽しみに観ていましたね。
 あと逆に観ないようにしていたのは「鉄コン筋クリート」。DVDは買っていたのですが、「絶対すごいジャンプシーンがある」と思って封印していました。今はもう観ましたけど、すごいカッコいいですね。見なくて良かったです(笑)。

——そう言えば「鉄コン」もジャンプしますね。「街」が舞台ですし。「CATMAN」の舞台「CATTOWN」のモデルはモントリオールなんだと思いますが、その辺り、街への拘りなどありますか。

 そうですね。拘りということではないですが、背景の打ち合わせを写真を撮りに行ってくれる友人と話していても「高級レストランは行った事無いから中がわからないので却下!」とか、「ヤバそうな店は怖いから使わない!」とか、そうこう言ってるうちに結局自分たちが知っている店になっちゃうような、結構、消極的なロケハンをしていますね。だから多くのロケ地は僕らの生活の場そのものです。さすがにビルの上にはそんなに上がらないですけど…僕自信、高所恐怖症なんで(笑)。

——映画を、プロットの段階ではなく製作中に観るというのは?

 どの作品も以前に何度か見た事があるのですが、「あのシーンの作り込みって、どういう風にしてたっけ?」と表現方法を再確認するという形で参考にしました。映画的表現とリズム、雰囲気作りに注目して見ていました。個人的には、プロットの時に好きな映画を見ちゃうのは内容に深く影響が出るので危険な気がして、なるべく避ける様にしています。

——やはりそうした意味でも、「CATMAN」と言うのは、既成の映画や物語へのリスペクトやオマージュと言うよりは、作者自身の投影に近いんですね。

 意識した投影というよりは、「目の前にあった素材がそれだった」という感じかと思っています。時々、僕が酔っぱらっていると「あれがCATMAN作った人だよ。」「なるほど…。」なんて会話を耳にする事もありますが、酔っぱらいはみんなそんな物だろうと(笑)。

——ある意味、誰の中にもある存在だと。

ん〜、そうは言っても自分の一部である事には間違いないですが、全てではないと思っています。今回のシリーズのスタッフには「天然ボケ」と思われていたようですし…。
 ただ、「シリーズ1」から画面にゴミを入れてみたりと「映画へのリスペクト」はあります。個人的な意見ですが、映画って劇場で見ていると何となくざらついてくすんだイメージがあって、画面がもったりしているような感じをうけるんです。その手触りみたいなものがいいなぁと常々思っていたので、ビジュアルが「パキッ」としがちなアニメーションで、なんとか「映画」に近づけないかと試行錯誤しています。

◆やせ我慢する男の滑稽さとかっこよさ

——では「シリーズ1・2」でも既に語られているとは思いますが、改めて「CATMAN シリーズ3」に込めたものとは?

 色々自分の中にはキーワードがあるんですが「自由」「孤独」というのが一番大きなテーマです。この2つのテーマの中で、走り、飛び、酔っぱらい、何かを探しているキャラクター。また、今まで何度もトラブルに巻き込まれているCATMANですが、一度もケンカには勝っていません。一つのケンカに勝たなくても惨めにならない、そんな心を持ったキャラクターを描きたいと思っています。
 今回、プロデューサーさんからは「CATMANかっこいいよね」と初めに言葉を頂いて。あとは、とにかく「やせ我慢する男の滑稽さとかっこよさ」をちゃんとやりましょうという話をしましたね。恋愛的要素を入れるか入れないかでは、何度かお話しさせてもらいましたが、キャラクターが増える分、基本ラインはシンプルにした感じです。プロデューサーさん的には、もうちょっと色気があった方が良かったのかもしれません。

——前回のお話で「エピソードの方向性を修正していただいた」というお話もありましたね。

 初めは、僕の肩に力が入っていて、やたら「かっこいい」「渋い」という方向に作り込んでしまっていました。そして、自分では気がつかなかったのですが、全体がちょっと「重く」なってしまっていたようです。そこで「シリーズ1」の軽快さ、楽しさを取り戻すようにといろいろご指導を頂きました。ある時点では、「全直ししてもいいから、良いものを作りなさい」とまで言って頂いていました。さすがに全直しはしていませんが、雰囲気は変わったと思います。

——基本的にはCATMANの物語ではありますが「シリーズ3」でも、いろいろなキャラクターが登場します。僕はチーズマフィアの赤シャツが気に入ってまして、最初から全6話と決まっていたのだから仕方ないですが、もっとふたりの関係が観たかった気もしますね。ご自身で思い入れのあるキャラとかは?

 チーズマフィアの赤シャツは、CATMANと正反対のアグレッシブなキャラクターで、当初かなり膨らませていたのですが、主人公が二人になりそうな程大きくなりすぎて思い切って削ってしまいました。サイドストーリーも当初考えていた話の一部です。ん〜、どのキャラクターにも思い入れはありますが、やっぱりCATMANとチーズ屋が今回のシリーズでは大きいですね。

——ブログでは、キャラクターの「しっぽ」の有る無しが「魂の象徴」みたいな話もありましたが、あれ、おもしろいですね。

 絵がリアルになっていくとしっぽが何となく邪魔な場合も出てきてしまって、あと描き忘れたり…シリーズが終わって気がついてみればCATMANと口の悪いねーちゃんにしかしっぽが生えてなかったという…。「忘れてました」じゃつまらないので、「アグレッシブに魂の自由を求めている」象徴ということにしています。はい、後付けです(笑)。

——技術的な意味でもディティールを深めたと同時に、脇役が世界観のディテールも高めたと思うのですが、更に作品世界に思い入れが出来たんじゃないですか?

 初めは、CATMANの一人の世界にキャラクターを増やしていくという事に抵抗もあったのですが、思い切ってやってみて今では良かったと思っています。
 「CATTOWN」が思ったより物騒な街だった事、気楽に生きていても人との接点は避けきれないこと…など、発見もいろいろありました。「シリーズ1」を作っていたときは、のんきな一人暮らしだった僕自身の「いつまでも一人でもしょうがない」という環境の変化も反映されているような気がします。

——今回「シリーズ1」のリメイク的側面があるとのお話でしたが、「シリーズ2」のリメイクという新シリーズが今後発表される可能性もありますか?

 プロデューサーに聞いて下さい(笑)。制作のプロセスが重くなってきているので、なかなか僕個人の判断で「やっちゃうぞ!」と言えなくなってきているのが現状です。ぶっちゃけ、僕自身も「まだいける?」と自問自答しながらやっています。可能性としては0ではないと思いますが…。皆さんフジテレビに「続編希望!」のメールを沢山送りつけて下さい。「続きは?」と聞いて下さる方には本当に感謝の気持ちで一杯です。

——ホント。「シリーズ4」「5」「6」…と、出来ればずっと続けて欲しいです。

 クリエイターとしては、「いつまでもCATMANじゃなく…」という気持ちは常にあります。同時にこの作品を認めて下さっている方が多くいらっしゃるのも幸せな現実です。
 実は普段の仕事の打ち合わせなんかでも、度々「CATMANみたいな感じで…」とか「ハードボイルドで…」という依頼は受けます。ただ、僕自身自分のやりたい作品については、ずっと模索している最中で、「自分にはまだまだ引き出しがあるんだ」と信じていたい気持ちもありますね。
でも「CATMAN」という作品は、もともと私的なところからスタートしているので、なんだかんだ言いながら二人三脚する事にはなると思います。もう、腐れ縁みたいな感じで。そういう意味では、これからも上手くつき合っていきたいですね。

——では最後に、「CATMAN」シリーズの今後の展開などがあれば。

 そうですね。まずは無事にフジテレビの地上波で放送と言うことで、暫くは余韻に浸っていたいです。休みたいし(笑)。

 とは言え…実は他にも、今の段階では詳細を発表できませんが、「まだいける」と思って頂いている方々とちょっと面白い企画を画策してたりします。「CATMAN」を見て頂いた方が「オレ、これ昔から知ってるぜ!」と自慢できる様なプロジェクトを立ち上げたいと思っていますので、もし宜しければ…期待しつつ、気長にお待ちください。


 僕個人のTV版の感想としては、各エピソードが続けて観られることへの喜びがまず挙げられます。Webで視聴する連続もののアニメーションの宿命みたいなものですが、いちいちクリックすることのストレスは意外に大きいかも。TV放映はそれが無いので、主人公や他のキャラクターへの感情移入がし易かったですし、各エピソードが物語のラストに集約されていくシナリオの秀逸さも改めて感じました。普通に30分のショートムービーを堪能した感覚が新鮮でした。

 青池さんの作品作りには、バリエーションの幅があるように感じます。「CATMAN」の初期シリーズ以降に作られたアニメーションでは、Flashを基本にしながら様々な技術・技法を駆使して作られていましたし、今回お話を伺ってみて、そうした背景にはいつも試行錯誤して新しい作品・作風にチャレンジしている姿勢みたいなものを感じます。また、そんなクリエイター青池良輔作品の中で「CATMAN」が持つ普遍性は、最先端の技術の中にあって作家性を失わない、氏の原点なのだと改めて感じます。
 「CATMAN」の作品性を読み解くひとつの鍵は、そのテーマ観は変らないまま、作画のビジュアルは(初期からのスタイルに拘らず)どんどん「進化」させて行くことにあるように思います。ある意味、それは主人公の持つ「普遍性」とは相反することかもしれませんが、常にビジュアルを進化させることで、常にカッコイイ作品になり得ているのだ、とも感じます。
 今後はスタッフワークも視野に入れるとのお話もありましたが、そうしたフットワークの自由さも、個人作家発信のアニメーションに許された最大の武器なのかも知れません。「CATMAN」、そして青池作品の進化に今後も注目です!

【関連情報】
・ウェブアニメ探訪【「CATMAN」作者に聞いてみた:前編】
http://www.animeflash.jp/news/1/catman_1.html

【関連サイト】
・aoike.ca/青池良輔
http://www.aoike.ca/
・フジテレビ>>CATMAN
http://www.fujitv.co.jp/game/catman/
・CATMAN's Blahg
http://wwwx.fujitv.co.jp/zoo/blog/index.jsp?cid=185&tid=


【mixi「ウェブアニメが好き」コミュ管理人・亜樹28号/20080306-15】
今回インタビューをするにあたり青池さんには、お忙しいスケジュールの中、本当に快く対応して頂きました。とても感謝しています。ありがとうございました。

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