ウェブアニメ探訪 【「ソワカちゃん」作者に聞いてみた】
前回は「護法少女ソワカちゃん」シリーズ(以下、ソワカちゃん)の作品概要と、僕の簡単な感想などをまとめさせて頂きましたので、今回はほとんどを作者のkihirohitoさんのインタビュー。それから、まとめWikiサイト「ソワカちゃん疏鈔(しょしょう)」の管理人SaltyDogさんにもお話を伺えたので、その辺りを中心に。
※前回の記事はコチラ(http://www.animeflash.jp/news/2/post_20.html)で。

◆作者kihirohitoさんインタビュー
・ニコニコ動画:公開マイリスト>>護法少女ソワカちゃん/kihirohito
http://www.nicovideo.jp/mylist/3633617
—ではまず、何故「ソワカちゃん」を作ろうと思ったのでしょう。
大きな理由はありません。一部の人が笑ってくれたらいいかなーぐらいの気持ちですね。
以前、芝居の脚本や演出をやってた事があるんですが、その時に100人のうち2〜3人ぐらいは、技術的な拙さを越えて意図を汲み取ってくれた人たちが居たので、目に見える評価という形を取らない人達も含めると、多めに見積もって、観た人の10〜20人に1人ぐらいは認めてくれるかなあという思いでした。まあ、商売じゃないんで、何人でも良いんですけど。気持ち的には常に2〜30人相手ぐらいの感覚でやっています。
ちなみに知人の類からは、自分の表現については、ほとんど評価されたことがありません(笑)。
—お芝居をやってらしたんですね。部活ですか?それとも劇団とか?
都内の小劇場です。知り合いの役者の芝居を観に行ったらあまりにつまらなかったので、経験もないのに「脚本と演出をやる」と言い出して(笑)。役者をかき集めて興行を打ったんです。でも、未経験ゆえに演技指導というのがよく分からないのと、仕事であまり時間がとれないのと、そもそも集団を仕切る能力が欠けているので、あまりうまくいかなかったですね。
やってるうちにいろいろ見えてきたので、本当はもっとやりたかったんだけど、時間がなくてそのまま立ち消えになりました。実は、その時に作った劇中歌をソワカちゃんシリーズで一部流用しています。
—では「護法少女ソワカちゃん」を作るうえで参考、影響された動画とかは。
基本的にはカラオケビデオだと思います。
あと、どこかで見た動画を無自覚に模倣しているかも知れませんが、それが何なのかわかりません。
—カラオケですか(笑)。ピアプロなどのご自身の書き込み(※1)では、ミク動画を作ろうと思った時点で、他のニコ動のミク関連の面白(ネタ)動画を観て、こういうのもアリなのかと思ったという話もありましたが。
そういうものを許容・享受する仕組なり環境が「場」として用意されたんだな、という認識です。自分で「場」を作る気力も才覚もなかったので、そこに乗っかってみた、ということになります。特にその時観た動画の内容について、どうこうということはありません。ニコ動については会員にはなっていたけれども、当時はほとんど観ていなかったというのが実情で、ミク関連動画はいわゆる「ネタ動画」がメインストリームであると、6話UPぐらいまで勘違いしていました。
それと今思いついたんですが、動画のスタイルとしては空耳系Flash、「オレ知らせ」とか「マイヤヒ」とか「もすこう」とかに影響を受けている気がしますね。
—「ソワカちゃん」では設定上、宗教関係のネタが出てきますが、もともと興味を持たれていた分野なんですか?
ご他聞に漏れず、一時期オカルトとか神秘思想に傾倒していた時期がありまして。その一環となるかと思います。ただ、入り方がちょっと変則的なもんで「ムー」とか好きな人とは、ちょっと守備範囲が違うと思いますが。
—自身の意識としてはDTMとFlashワークのどちらに比重を置いてるとかはありますか。
そうですね。どちらかに重きを置いているというという意識はないですが、動画のほうが面倒臭くなって投げやりになる確率が高いです(笑)。
と言っても、現在、広い意味で言えば「IT系の仕事」をしてるんですが、Flashを使うのは初めてで、もっと扱うのに時間がかかるかと思ってたんですが意外に早くできました。
DTM歴は10年ぐらいですね。でも途中何年かブランクがあります。好きなアーティストを挙げるとインダストリアル系ではFoetus、NINE INCH NAILS辺りとか、ゴス系だとThe Sister Of Mercy、CUREとか。ロ ンドンパンク系だとThe Damned、THE STRANGLERSとかで、ニューヨークパンク系ではPATTISMITH、THE TELEVISION辺り。オルタナ系はPixies、R.E.M.とかですね。
—その音楽性もさることながら、ニコ動のコメント等でもkihirohitoさんは読書家として評されているようですが、実際お好きな小説は?他に好きな映画、漫画、、ゲーム、アニメーションなどがあれば。
小説では、J・K・ローリングのハリー・ポッターシリーズ、J・R・R・トールキン「指輪物語」、中井英夫「虚無への供物」、夢野久作「ドグラマグラ」、沼正三「家畜人ヤプー」、半村良「妖星伝」、内田百閒「冥途・旅順入城式」、隆慶一郎「影武者徳川家康」、酒見賢一「陋巷に在り」、ウィリアム・ギブスンの電脳三部作、国枝士郎「神州纐纈城」、ジェイムズ・エルロイの暗黒のLA四部作、辺りでしょうか。現役の小説家だと、最近は酒見賢一と京極夏彦の次回作が楽しみ。ビジュアル系からは、最近ちょっと離れちゃってます。
映画は「時計仕掛けのオレンジ」「エル・トポ」「マーズ・アタック」「ツイン・ピークス」「デッドゾーン」…とか。
漫画は、根本敬の大河精子ロマンシリーズとか、美内すずえ「ガラスの仮面」、横山光輝「三国志」、福本信行「カイジ」、萩尾望都「ポーの一族」、岡崎京子「ヘルター・スケルター」、吉田秋生「BANANA FISH」、白土三平「カムイ伝」、いがらしみきお「ぼのぼの」、山岸涼子「日出処の天子」とかですね。
あと、ゲームは「街」「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」などで、アニメでは「太陽の王子ホルスの大冒険」「天空の城ラピュタ」「うる星やつら ビューティフルドリーマー」「新世紀エヴァンゲリオン」「魔方陣グルグル」などが好きです。勿論、どのジャンルもこの他に好きな作品はあります。
—現在、基本的にはニコニコ動画のみで作品を公開されてるわけですが、その辺りに拘りは?
まぁ、発表媒体はどこでもいいかなと。
でも個人サイトで発表するとすれば、自分でインフラを作る時間も気力もないというのが正直なところです。
—とは言え、ニコニコ動画などでの反響は大きかったですよね。
思ったより好評だったので、意外でした。もっと、けなされるかと思ってたので…(笑)。
—作者は「謎」のままの方が良いと言う声もありますが…。
「謎の作者」というレッテルに関しては別に演出しているつもりはなくて、諸関係への配慮と、面倒臭がりの性分の結果によって作者の声がオープンになっていないだけかな、とか思います。「謎の作者」演出まで含めて作品だとすれば、こうしたインタビューにしても、もっとちゃんと何重ものトラップを仕掛けるとか考えたいとか思いますが…。何も考えていない今の状況では、いずれボロが出ると思うので。まぁ、答えられるところには、普通に答えるので良いかなと(笑)。
—では、そうした反響はkihirohitoさんにとって?
ニコニコ動画はビビッドに反応が来るので、ライブ感覚で面白かったです。
実は6話ぐらいまでは、シリーズ化など考えていなかったので、結果的に飽きたり面倒臭くなったらいつでもやめようと思ってて。でも、こうして現在も新作を発表しているということは、確実にニコニコ動画のコメントに背中を押される形になったかと思いますね。それと、mixiコミュニティやまとめwikiサイトを作ってくださった方々にも本当に感謝しています。
—最後に、ご自身の活動の今後の展望、予定などありましたら教えてください。
ともかく今は「ソワカちゃん」の決着をつけなければ、という思いです。
話を広げすぎて、いつ終わるのか分からない…(笑)。
◆まとめWikiサイト管理人SaltyDogさんインタビュー
・ソワカちゃん疏鈔(しょしょう)
http://sowaka.s-dog.net/
まとめWikiサイト「ソワカちゃん疏鈔」は、とても見やすく整理されたサイトだという印象があります。実際、僕自身もここで初めて知ったネタや情報などもありますし、それで改めて「ソワカちゃん」という作品世界の奥の深さみたいなものを再確認出来たと感じます。ウェブアニメ作品のファンサイトと言うのはいろいろあると思いますが、Wikiという形式もネタ満載の「ソワカちゃん」という作品に合っていて、とても楽しいアプローチだと感じます。
—サイトを始めようと思ったキッカケを教えてください。
私が「ソワカちゃん」を知ったのは「ED」がリリースされた後で、「7話」「3話」とリリースされる間に、「ソワカちゃん」の作品世界、特に私の場合は「元ネタ探し」にハマりまして。ネタを調べれば調べるほど作者の知識に驚愕したんですね。そんな時、mixiで「護法少女ソワカちゃん」コミュを発見して登録。コミュ内で話題に出たmantrapriさんのサイト(※2)での解説も参考にしながら、あれこれ元ネタ詮索を続けてて。
6話が出る頃、段々と「ソワカちゃん」の閲覧者も増えて来たのですが、「なんぞこれーw」「カオスww」のようなコメントが目立ちました。「1話どこ??」のようなコメントも多かったです。さらに「作者は病気」タグを見るに就け、「ソワカちゃん」が単なる「電波ソング(※3)」じゃないと知らしめるためにも、作品世界への案内が必要だなと感じ始めました。
—それで、更にハマってしまったんですね(笑)
そうですね。ニコ動のコメントでの「元ネタ解説」は不快に思う方が多かった、と言うのもあって、その頃から個人的に調べた元ネタをまとめた情報をコミュの中だけで語るのではなくて、mixi外で閲覧できる独立したサイトで公開した方が良いなと漠然と思い始めました。
更には、作者さんの視点に立って考えてみたとき、仕込んだネタを分かってもらえてるのか否かが不明なままでは、モチベーションも下がるのではないか?飽きちゃうんじゃないか?と危惧してて。作者さんへのラブコール・ファンレターの意味も込めて、最終的には自分でまとめサイトを作ることにしたと言うのが、おおよその経緯です。
—では改めて「ソワカちゃん」という作品に関しての想いなどがあれば。
当然ですが、自分にとっては、とても思い入れの強い作品ですね。これまで自分なりに様々な書籍・映画・音楽・漫画などの作品に接し、ファンになった作品も数ありますが「ソワカちゃんシリーズ」は別格です。自ら、まとめサイトを作りたくなるような作品は今後も無いでしょう。
kihirohitoさん御本人は謙遜なさるでしょうけど、きっと不世出の天才に違いありません(笑)。同時代に生まれたことを嬉しく思います。(-人-)合掌。
—せっかくなので、オススメの「ソワカちゃん」2次創作ものがあったら教えてください。
・ソワカちゃんでウッーウッーウマウマ(゜∀゜)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2276152
・FC音源による護法少女ソワカちゃん
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2036665
いろいろありますが、この2つを挙げておきます。理由は、なんとなく…です(笑)。
—kihirohitoさんのインタビューでは「コミュニティやまとめWikiサイトに感謝している」とのお話もありましたが。如何ですか。
作者さんの人の良さ、誠実さも、ソワカちゃんシリーズの大きな魅力だと思います。
ただ、まとめサイトの存在がプレッシャーになっていたら申し訳ないですね。ご自身の好きなようにマイペースで今後も頑張っていただけたら、と思います。これからも一ファンとして応援しております。いつか般若湯でもご一緒したいです(笑)。
というコトで、限られたスペースではありますが今回はインタビューをお届けしました。快く対応して頂けた両氏には本当に感謝しています。
こうしてお話を伺ってみると「飽きたらいつでもやめようと思ってた」とは言うものの、作者には確実に「表現したいもの」があったというのが分かりますし、受け止めてくれる人の存在もきちんと考えられていたわけで。一方受け手の、まとめサイト管理人さんは管理人さんで「飽きてやめてしまわないように」と、奇遇にも、互いが互いの気持ちに暗黙のうちに応えていたのが分かります。Web上で作品を発表して行くウェブアニメのスタイルに於いて、こうしたクリエイターとファンの出会いは本当に奇跡的なものだと改めて感じます。ある意味こうした関係性は、意図的に創ろうと思って創れるものではないところに大きな価値があるようにも思います。
また、誤解を恐れずに言えば、作品の方向性は異なるものの「活動漫画館」の「のすふぇらとぅ」さんの活動にも通じるような、良い意味での作者とファンの交流の流れみたいなものを個人的には感じたりもしました。
そして「ソワカちゃん」シリーズ更新のハイペース度は未だ衰えず、前回の「ウェブアニメ探訪」後にも既に『一蓮托生なり三兄弟 護法少女ソワカちゃん』と『機械居士かく語りき 護法少女ソワカちゃん第10話の歌(その1)』、更に「夢の旧作シリーズ」の第4弾『愛される犬【鏡音レン】【オリジナル】』という3つの新作が発表されていてビックリです。
SaltvDogさんも危惧されていましたが、実はこうした記事も作者のkihirohitoさんにとって、変なプレッシャーになってしまってはいけない、と思っていたのですが…それはどうやら僕の取り越し苦労のようです。
【関連サイト】
・ニコニコ動画:SaltyDogさんの公開マイリスト「ソワカちゃん関連動画」
http://www.nicovideo.jp/mylist/4753673
【索引※1】
・ピアプロ>>kihirohito
http://piapro.jp/kihirohito
※ピアプロに見る「ソワカちゃん」ができるまで。
初音ミクを知る
↓
入力したとおりに女の子が歌うのか、うは
↓
電器屋に行くもKAITOしか売ってない
↓
ネットで注文
↓
初音ミクが家に届く
↓
過去に作った曲に歌を乗せてみる
↓
なんか合わない
↓
アニソンとか合うかも
↓
YouTubeに初音ミク動画が多数上がっているのを知る
↓
YouTubeで「Ievan Polkka」と「ドナドナ」を観る
↓
初音ミクを使って面白動画を作るのが流行っているのか
↓
じゃあ流行に乗って愉快なアニソンを作って歌わせてみよう
↓
どれにしよう「右翼少女もの」「左翼少女もの」「仏教少女もの」
↓
女の子の歌うアニソンと言えば魔法少女ものだな
↓
右翼と左翼は魔法使わないな、ふつう
↓
SEX PISTOLSが11月に再結成か、ふーん
↓
じゃあ、ここは景気づけにイントロをインスパイアー
↓
歌詞は思いつきを並べよう。エキセントリック少年ボウイ風で
↓
曲できた
↓
さあ動画作るか。うちに一回も使ってないFlashMakerがあったな
↓
初音ミクの絵はネットからパクるか。Google、Googleと
↓
あれ?ググっても、全然出てこない...(10/7時点)
↓
みんな自分で描いているのか?そういう決まりなのか?
↓
しゃあない、自分で描くか。描いたことないけど
↓
描く
↓
なんだこのヘナチョコな絵は...もうだめだ...
↓
それでもやりきることに意義があるな。継続は力なりだな。
↓
途中何度も挫けそうになったが、やっとできた
↓
ではYouTubeとニコニコ動画にアップ
↓
うわ、いろいろ間違ってる。ま、いいか、どうせそんなに見る人いないだろ
↓
今に至る
【索引※2】
・2マントラプリの生涯原液35度「護法少女ソワカちゃんオープニング解説」
http://d.hatena.ne.jp/mantrapri/20071101
【索引※3】
電波ソング/ Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B3%A2%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%82%B0
【mixi「ウェブアニメが好き」コミュ管理人・亜樹28号/200802013-13】
ちなみに僕が「ウェブアニメ」と称するのは「Web上で視聴できるオリジナルなアニメーション」のことです。
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